呼応
ゲドは抵抗しなかった。
「・・・・・・・・・・・」
ただ、ゲドの目が俺に問い掛けてくる。
けれど、俺はそれを無視して、ゲドの口内に無理やり舌をねじ込んだ。
上顎の裏を、歯列を、動かそうという気力の無いゲドの舌を、思う存分味わう。
微かにゲドの体が動いた。
こんな刺激で反応するってことは、相当慣れてるってことだ。
嫌な奴だ。
充分にゲドの口内を蹂躙してから、俺は唇を離した。
「どういうつもりだ。」
案の定、ゲドが問い掛けてくる。
「あんたを抱きたい。」
言葉は自分でも驚くほど、するりと口を出た。
「・・・」
ゲドが怪訝そうに眉をひそめる。そりゃそうか。
「ここにはそういう施設が無いからな。手を出したらやっかいそうな女ばっかだし。
この間に合わせの団体を束ねるためにも、協力してくれないかな。
炎の英雄のサポートしてる、真の紋章継承者のゲドさんよ。」
実際、本拠地と称されるこの城にある娯楽施設はある意味健全なものばかりだ。
酒場があるのは救いだが、それだって演劇の舞台と共用の施設で、場末の酒場ならではの荒んだ雰囲気とも、甘い雰囲気ともかけ離れている。
緊迫した状況の中、男って奴は生理的に、したくなるもんだ。
故郷を守るために必死な奴らと違って、立場的に自由で、こういう状況に慣れてる傭兵なんかは、絶対にそっちが溜まってる。
ゲドもその辺は判るはずだ。小隊長なんて立場にいれば、隊員、というより傭兵という人間の在り様は身に染みて理解している。
そして、信じ難いが、俺も炎の英雄を取り巻く星の一つだとするならば、ゲドとしては、こんなことで手放すことは出来ないだろう。
我ながら、小賢しい。
「・・・・・・好きにしろ。」
案の定ゲドはそう言った。
そして、案の定、ゲドの瞳は俺を見ない。
俺は自虐的に笑う。
またひとつ、ゲドの中で俺の評価が下がったことだろう。
その目に俺を映すのは御免だと言わんばかりに、ゲドは横を向いて、目を閉じてしまっている。
嫌な奴だ。
どうしようもなく、嫌な奴だ。
ゲドも、俺も。
けど、もう止められない。
俺はゲドの鎧を外しにかかった。
ゲドの肌は、俺の予想を裏切っていた。
縦横無尽に走る傷跡は、傭兵なら判らなくも無い。
ただ、そのひきつれた跡を舌でなぞるだけで、ゲドの体が小さく動く。
どこもかしこも感じやすい。
声こそ出さないが、呼吸は段々と浅く、荒くなっていく。
俺は左の胸の突起に舌をはわす。
固くなったそれを押しつぶしながら、指で傷を撫で上げる。
「・・・!」
のけぞるゲドの首筋を眺める。
とても気分がいい。
俺の下で、あのゲドが俺の刺激に反応を返している。
でも、まだ足りない。
俺は今度は傷跡を上から下へなぞって、その延長線上にある下肢へと手を伸ばす。
太ももの、張った筋肉の質感を確かめる。
内側の、傷の無い皮膚の意外なきめ細かさを味わってから、少しだけ上へ。
「・・・・く・」
小さく聞こえる声。
すでにゲドの雄は少なからず勃ち上がっている。
指先で細かい刺激を繰り返しながら、舌では胸の突起を責める。
直接触ることで、ゲドの質量は加速度的に増える。
面白いほどに。悔しいほどに。
こんなに敏感なのは、誰の仕業なのか。
悔しくて、突起に歯を立てる。
「っ・・」
ゲドの眉間に皺が寄るが、手に伝わる質量は変らない。
痛みすら、快楽に通じる刺激なのか。
遠慮はいらないってことだ。
俺は手の動きを速めた。
容赦なくゲドを追いたてる。
ゲドの胸が浅い呼吸に合わせて上下する。
俺は突起の横を、強く吸う。残った紅い場所を舌で強く押す。痛みすら刺激だと、もう判っているから。
その間も、手は休めない。
ゲドの四肢に力が入る。指先が、ベッドを掻く。
限界が近いのを感じて、俺はまた動きを速める。
「・・・・・・・く!・・」
ゲドの全身が緊張し、口から苦しげな声が漏れる。
俺の手に、暖かな液体がかかる。指の隙間から滴り落ちる、熱い精。
ゲドの体から力が抜ける。浅い呼吸の音だけが耳につく。
けど、まだ足りない。
俺は合間を置かずにゲド自身を口に含む。
「・・・・・ぅあ・・」
さすがに、ゲドの口から声が漏れる。
けれど、俺はそれを気にせずに、先端のくぼみを舐める。
「く・・」
苦しそうな声が、耳に心地良い。
くぼみから裏にかけて舌を滑らせ、カリの部分を丹念に刺激してやると、ゲドの質量が増した。
右手で竿の部分を掴んで上下させる。
左手に体液を絡ませて、奥へと指をはわして入口を刺激する。
「・・・・・は・・・っ」
ゲドの呼吸が不規則に途切れる。
苦痛に近い快楽を堪えて、眉がしかめられている。
まだ、足りない。
俺は左手の指を、拒絶する強張りをほぐしもせずに、固く閉じたゲドの内側へと挿し入れた。
「ん・・あ・・・」
次第にゲドが声を漏らすようになっていた。
今まで聞いたことも無いその声色に驚く。
押さえられているのに、やたらと艶めいている。
俺はゲドの先端を丸ごと口の中に含んだ。
唇をつぼませて、歯を当てないように注意しながら口内全体でゲドを刺激する。
「・・・・・く・・あ・・・」
緊張と弛緩の隙を狙って、挿し入れた指の数を増やす。
先ほどまで頑なに俺を拒んでいたそこは、今は柔らかく俺の指を包んでいる。
熱い内側で、探るように指を動かす。それぞれに変化をつけて。
とある一点で、ゲドの体が大きく跳ねた。
「!!」
見つけた。
俺は容赦無くそこを責める。
ゲドの足が、ピンと伸ばされる。筋肉の筋が露になる。
興覚めだとは思わない。むしろ、鍛えられた体は綺麗で、俺は目を細めてその様子を眺めた。
ゲドの体が小刻みに震えだす。
吐精の気配を感じて、俺は指に力を篭める。
口の中に、苦くて熱いほとばしり。
かなり不味かったが、残らず飲みこむ。喉に引っ掛かるようにしながらも、それは俺の中に落ちていった。
立て続けの吐精で、ゲドはぐったりと体の力を抜いている。
息がまだ荒い。
「ゲド。」
俺はゲドの顔を覗きこんだ。
ゲドは面倒臭そうに目を開けた。
その漆黒の瞳が俺を見る。
いや、見ていない。
ゲドの瞳は、どこかぼんやりと、俺じゃ無いものを見ている。
嫌な奴だ。
「俺を見ろよ。」
俺の声には苛立ちが混ざっている。
「見ているが。」
そっけないゲドの声に苛々する。
「俺の名前を呼べよ。」
俺はゲドの髪を掴む。苛々が収まらない。
どうして、ゲドは俺を見ない。
「・・・デューク。」
投げやりなゲドの口調に、益々苛立つ。
違う。そうじゃない。
そうじゃ無いんだ。
俺を見て、俺の名前を呼んで、俺を求めてくれ。
狂おしいほどの感情が俺を支配する。
まだ足りない。まだ足りないんだ。
ゲドの足を持ち上げて、俺は自分自身をゲドに穿つ。
指で多少は慣らしておいたとはいえ、急激な挿入はやはり痛いのか、ゲドの顔が苦痛に歪む。
右手に再びゲド自身を握りこむ。
さすがに、力無くうなだれているが、それでも直接触れば、ぴくりと反応する。
「・・く・・ぅ」
俺はゆっくりと、だが深い場所までゲドを貫いた。
ぎりぎりまで抜いて、また同じくらい深く挿し入れる。
何度も繰り返すうちに、ゲドの様子が変ってくる。
上気する肌に浮かぶ汗と、小さいながらも艶めいた喘ぎ声。
ゲド自身がすっかり勃ち上がったのを確認して、俺は動きを速くする。
「は・・・ぁ」
目を閉じて快楽を追うゲド。
俺はゲドの頬に手を添えた。痩せた頬のライン。精悍といえば聞こえはいいが、体調の悪い今は痛々しい。
「ゲド。俺を見ろよ。」
ゲドは薄く目を開ける。
漆黒の色合を快楽でさらに深くして、けれどやはりどこか遠くを見る目つきでゲドは俺を見詰めた。
たまらない。
「俺を呼べよ。」
俺の声は、もしかしたら泣きそうだったかもしれない。
「デューク・・・」
いつもと違う質感で、ゲドが俺の名前を呼ぶ。
でも、違う。そうじゃない。まだ違う。
ギリギリの、切羽詰った感情を篭めて、俺を見て、呼んで、求めて。
足りない。全然。
俺はただひたすら、ゲドを追い詰めていた。
無理やり快楽を引き出して、吐精を促し、休む間を与えずまた促す。
何度か俺も達したが、求めるものが得られないから、何度でも繰り返す。
「・・デュ・・・ク・」
切れ切れのゲドの声が俺を呼ぶ。
まだ足りない。
本当にゲドは嫌な奴だ。
こんなに俺が求めても、まだ俺を求めない。
「ゲド・・・」
俺は熱に浮かされたように呟く。
自分でもどうしようも無い気持ちを篭めて、ゲドの名前を呼ぶ。
ゲド。同じくらいの気持ちを篭めて、俺を呼べ。どうしようも無いくらい、昂ぶる感情を篭めて、俺を見ろ。
俺がお前を見るように。今までずっと、見てきたように。
今だけでいいから。
ゲドがついには意識を手放してしまうまで。
俺はずっと、ゲドを求め続けていた。
〇久(2003.0615)
難しいなぁ・・・エロって。(遠い目)
なにせ攻めの一人称で、行け行けの人だから、色っぽく無いのは仕方が無い。
あうーーーーん。
そして、終わってるんですか? これ。
一応、終わってるつもりなんですが。(苦笑)
終わって無いですか?
両人とも救われていませんなぁ。(吐息)
結局、ちょっとでもゲドはデュークを求めたと思うんですがね。意識ぶっ飛ばして。
伝わってるかなー。ちょっとはデュークに伝わったかなー。
それとも、そこまで書くべきだったのかなー。(まだ迷ってる)
でもやっぱ、デュークは片思いなんだよなー。(爆)
ところで、これ書いてたのって朝方から昼にかけてです。
天気の良い休日の昼日中に、あたしゃ何やってるんでしょう。
相変わらずダーク属性なSSにお付き合い下さり、感謝であります。
私的ゲド相関107祭り