トウタとゲドの関係


トウタは医者。幼いころから医療の道を目指し、諸国をめぐって病人を救済してゆく偉い人。
なんつーの? 国境の無い医師団?(違うか)
この戦闘が終わった後はハレックの故郷に行ってましたね。
一箇所に留まり、高価な報酬を期待して金持ち相手に開業するんでは無く、
あくまで病人のために従事しているその姿は「なんていい奴なんだ君は。」と感動すら与えます。
真似できません。

トウタはゲドを、あまり好きじゃないかもしれません。
人の命を大事にする医者にとって、傭兵なんてぶっちゃけ人殺しですから。
でも、国同士の混乱を最小限に押さえるために、そんな存在が必要なのも理解してはいる。(もう大人だし)
そしてゲドは真の紋章継承者。
かつてトウタは幻水2主人公という、真の紋章継承者を目の当たりにしていて、その辛さも知ってる。
好きにはなれないけど、認めてる。頑張って欲しいと思ってたりはするんじゃないかな。

ゲドはトウタを・・・普通に認めてるかと。(身も蓋も無い)
腕のいい医者だってことは風の噂に聞いてるかもですね。
傭兵なんて、命がけの職業ですし、例えば部下が腕失ったりしたら、いい医者に見せないと命に関わるし。
逆に自分らが始末しようとした相手が医者によって助かってしまったら悔しいし(?)
なんにせよ、医者という職業を評価してると思いますよ。
自分には出来ないことを成す人ですから。 命を奪う自分と与える医者。ふふ。ドラマっすね〜(そうか?)


素顔のままで


 ゲドが真の雷の紋章を、仮面の神官将に奪われた。
 その事実はあっという間に本拠地中に広まり、周りの士気を大いに下げた。
 それでも、一度仕掛けられた戦いは続く。もう、後戻りなど出来ないのだ。

 ある日、エースがゲドを連れて医務室を訪れた。
 トウタは最近需要の多い、鬱病に対策を練るため読んでいた専門書から顔を上げた。
「先生、ちょーっと大将見てやってくれませんかね。」
 エースがゲドに椅子を勧めると、憮然とした表情でゲドは腰掛ける。
「特に具合が悪いわけでは無いんだが、こいつが煩くてな。
 真の紋章が無くなっても、すぐには死なんと納得させてやってくれ。」
 ゲドが真の雷の紋章の継承者であることは、すでに城の全員が承知の事実だった。
 そして、その紋章が奪われたことも、奪われた紋章の持ち主の命が長くは無いことも。

 トウタはゲドの顔に手を伸ばし、熱と、目の充血を調べた。
 口を開いてもらい、喉の奥を確かめる。
 促して、防具たっぷりのコートを脱いでもらう。
 黒いシャツの前をはだいて、鍛えられた筋肉に心音を計る道具を当て、耳をすます。
 トウタは呆れた。
 ここまで熱が高く、どこもかしこも風邪の症状を示しているというのに、何故ゲドは普通でいられるのだろう。
 そして、不意に思う。
 これ以上士気を下げないために、平気な振りをするしかないのだと。
 そして困る。
 医者として、この状態を放っておくわけにはいかない。ゲドには栄養と休息、薬と治療が必要だ。
 しかし、ゲドの状態を回りに知られることは、おそらく好ましく無い。
 トウタがゲドの顔をうかがうと、ゲドは相変わらず憮然とした表情で、黙って椅子に腰掛けている。
 この熱では、ふらついても不思議ではあるまいに。

 トウタは小さく息をついた。
 ひとつ、乗るしかないかもしれない。
 ゲドを咎める目つきで眺めてから、トウタはエースへと体を向けた。
「はい。ゲドさんの体はなんともありません。いたって健康です。
 どちらかと言うと、エースさんのほうが不健康なんじゃないですか?
 ちょっと、ここに掛けていただけませんか?」
 にっこりと微笑むと、エースは凄い勢いで首を振った。
「いやいや、遠慮しますって。俺は昔っから、薬が苦手で。」
「健康なら薬の必要は無いんですが。」
「いや、いいです。遠慮します。じゃぁまた。 ミオさんもまた。」
 エースは下手なウインクをミオに贈り、ゲドと共に医務室を後にした。


 その夜。
 トウタは風邪薬と栄養のあるスープと、汗を拭く布と着替えと・・・・ともかく、風邪対策のいっさいがっさいを手に、ゲドの私室を訪れた。
 控えめにノックをする。
「誰だ?」
「医者です。」
 トウタの答えに、鍵の開く音がした。
 すばやく中に入り、トウタは鍵を閉めた。
 目の前にいるゲドの顔色は悪く、具合が悪いのがありありと見て取れる。
「まったく・・・」
 トウタはため息をついた。
「どうして、こんなになるまで隠してるんですか。」
 トウタの問いにゲドは答えず、おぼつかない足で寝台へ近づき、転がるようにその上に伏した。
「・・・まぁ、わかりますけどね。」
 トウタは呟きながら寝台へ近づいた。
 持って来たスープを器に移し、ゲドへと差し出す。
「とりあえず、これを飲んで下さい。エイミさんに作ってもらった、栄養たっぷりのスープです。
 中に滋養強壮の薬草も入ってますから、ちょっと苦いですけど、我慢して。」
 どろっとしたその液体を、ゲドは何も言わずに飲み干した。
 いささか眉が寄った気もするけれど。
「次にこれ。風邪薬です。」
 スープよりも、さらにどろどろとした液体と、やけに黒い塊が二つ。
 ゲドはさらに眉を寄せながら、文句も言わずにそれらを嚥下した。
「とりあえずしっかり休んで汗をかいて下さい。今晩で治せるものなら治しましょう。」
 トウタはゲドの額に浮かぶ汗を拭き、冷やした布を置いてから、寝台の近くに椅子を寄せた。
 今夜は一晩中ゲドに付き添うつもりだ。
「済まんな。」
 ゲドの小さな呟きに、トウタは微苦笑を浮かべた。
「いいえ。医者の勤めですから。」
 ゲドは何も答えなかったが、やがて静かに目を閉じた。

 ゲドが身じろぎした際に、また額の布が落ちた。
 トウタはその位置を直すとき、ふと違和感を感じた。
 眼帯。
 ゲドの右目を覆う眼帯が額を横切っている。
 汗をかかねばならないこの状況で、眼帯をしたまま寝るのは無茶だろう。
 どう考えても蒸れる。
 ただ、この状況でも眼帯を外していない所を見ると、よほど人に見られたく無いとも考えられる。

 トウタはしばらく迷った。
 けれど、医者として、患者を回復させるのが努め。
「済みません。」
 小さく声をかけてから、トウタはゲドの眼帯をそっと外した。
 眼帯の下、本来右目のあるべき場所は、あるべき眼球を失っているためだろう、窪んでいる。
 その上にあるのは刀によるものだろうか? やけに直線的な傷。
 トウタの胸が痛んだ。
 眼球は弱い部分だ。
 直接傷を負わされれば、治る見込みは無い。
 腐って他の部分に悪影響を与える前に摘出するのが最善ではあるのだが・・・
 不老不死を与える真の紋章でも、紋章を得る前に負った傷は癒せないということだろうか?
 
 トウタはゲドの長い前髪を指で寄せ、落ち窪んだ眼窩に溜まる汗を拭いた。
 眼帯は丁寧に畳んでテーブルの上に置いた。
 布をまた氷水に浸し、額に置く。
 ゲドがまた、身じろぎする。
 呼吸が浅い。
 長年、真の紋章を身につけて、並の傷や病気に無縁だった分、抵抗力が低いのかもしれない。
 苦しそうに眉を寄せるゲド。
 トウタは思いつく限りの看病を施した。


 翌朝。
 朝の光が窓から差し込む頃には、ゲドの呼吸は大分落ち着いていた。
 病気知らずで抵抗力が低いのかもしれないが、その分、薬を飲んだことも無いようだったから、初めて飲む薬がよく効いたのかもしれない。
 とりあえずは一安心だ。
 トウタは一息ついて立ちあがり、体を伸ばした。
 さすがに、一晩ずっと一人で看病をしていると、少々疲れる。
 首など回して、肩の凝りをほぐす。
 持ってきた看病の道具を全てまとめ、部屋を立ち去ろうとした時に、ふと気づく。
 そういえば。
 眼帯は、元通りにしておいたほうがいいだろうか?

 おそらく本人にしてみれば、見られたく無い傷なのだろう。
 眼帯と、長い前髪と。あれだけ厳重に隠しているのだから。

 トウタはテーブルの上に置いてある眼帯を手に取った。
 寝てる間にそっと戻しておけば・・・
 そっと、ゲドの頭に手をかける。
 と、その手をゲドに掴まれた。
「うわ。」
 起きているとは思わなかったので、トウタは驚いて目を見張った。
「・・・ああ・・・先生か・・・」
 どこか焦点の合わない瞳で、ゲドはトウタを見つめた。
「おはようございます。気分はいかがですか?」
 衝撃から立ち直ったトウタが、優しい口調で問う。
「・・・大分良い。済まなかった。」
 身を起こそうとするゲドを、トウタは押しとどめた。
「もう少し、寝ていた方がいいと思いますよ。」
「だが・・・」
「まだ夜が明けたばかりです。逆に、今外に出ても、ケンジさんくらいしか起きていませんよ?」
 その言葉に、ゲドは少し笑った。
 早朝に行われるケンジの体操に付き合わされた隊員の話でも思い出したのかもしれない。
「そうだな。」
 大人しくゲドは横になった。
「朝食を食べたら、この薬を飲んで下さい。
 もう、大分熱は下がっていますから大丈夫だとは思いますが、念のため。」
「ああ。」
 ゲドはトウタが示し、テーブルの上に置いた黒い丸薬を見て確かめた。

「それじゃぁ私は医務室に戻ります。
 無茶はしないで下さいね。戦闘に参加なんてもっての他ですよ。
 お酒も入浴も出来れば控えて下さい。食事はきちんと栄養あるものを。
 一応、今晩も伺いますから。」
 風邪をひいた時の諸注意を言い置いてから、トウタはゲドに向かって頭を下げた。
「それから・・・汗をかいていたので眼帯は外させてもらいました。」
 治療に必要なことではあるが、黙って人の秘所を暴いた罪悪感がある。
「いや・・・別にいい。」
 ゲドはひとつ、ゆっくりと瞬きをした。
「そこまで頭が回って無かった。先生が気にすることじゃない。
 ・・・かえって済まなかった。見て、気持ちの良いものでは無いだろう。」
「いいえ。戦いでついた傷を、気持ち悪いとは思いませんから。」
 トウタは頭を軽く振った。

 医者が助けることの出来る人数を、はるかに超えて戦士は敵を倒す。
 時折、自分達のやっていることがあまりに無為に思える。
 けれど、彼らには彼らの理由があって、戦っている。
 生きるため…守るため…。自分のため…国のため…。
 生きるための抗いの中、負った傷に貴賎など無い。
 それは、まだ幼かった頃、体の一部を失った兵士の傷の断面を見て、具合が悪くなったことはあるけれど、それは慣れていなかったから。
 第一、傷を気持ち悪いと言っていたら医者は勤まらない。

「そうか。」
 ぶっきらぼうに、けれど少し安心したようにゲドは呟いて、目を閉じた。
「済まない。やはり少し、寝ることにする。」
「ええ。その方がいいですよ。」
 トウタは微笑んで、立ちあがる。
「お大事に。」
 心からそう呟いて、トウタはゲドの部屋を後にした。

 真の紋章の継承者は、いやがおうにも、大きな運命に巻き込まれる。
 心も、体も傷ついたままで永遠の生を生きる・・・。
 かつて自分が見た真の紋章の継承者も、辛い運命と戦っていた。
 永遠の生は、傍から見れば羨ましく思えるが、本人にすれば苦行なのだ。

「・・・」
 真の紋章を失った時、継承者には、わずかな時しか残されないという。
 ゲドは真の紋章を身につけていた年月が長い分、影響も大きいのだろう。
 いつ、自分の命が費えるのか判らない恐怖。
 全て知った上で、気丈に振舞うことが出来るのは、強い精神力の賜物だろう。
「・・・」
 トウタは暗くなる気分を無理やり上向かせようとした。
 せめて医者である自分は、ゲドの健康面をフォローしよう。
 癒せない傷は多いけれど、これ以上の傷を残さぬために。

 いつか、ゲドが素顔のままで笑えるように。

 それは、祈りに似た想いだった。



                                        了(2003.0421)

えっとぉ・・・?(苦笑)
何が書きたいんでしょうねぇ、私は。
(自分で判らない辺り、アウト。)
多分、my設定たっぷりの右目の傷が書きたかったんだと思われ。

最初はね、ゲドの裸見て汗拭いてるうちにドキドキしちゃうトウタでも・・・と思ってたはずなのですがねぇ。
自分で思うより、私は医者贔屓が激しいらしく。(苦笑)
ゲーム中のトウタを見る限り、そんなに深く考えていなさそうなのにな。(笑)
あの人は、いかにミオさんと一緒にいるかってのが世界の命題な気も。(苦笑)

だからここのトウタはちょっと別人に近いですわな。
こういう一面も、きっとあると思うんだよ。
前回の戦争で主人公や、坊ちゃん見て、小さいながらも思う所あり。
ナナミ存命に関して内緒にしなきゃいけないって時(トウタはホウアンの助手だから、そりゃナナミ生きてるの知ってたはずだ)ホウアンやシュウから、どうして内緒にするのかとか、聞いてたはずだ。
普通より、生死の狭間に近い所にいる人だから、考えることだって多いのさ。
(多分、贔屓。 間違い無く、医者贔屓)

てわけで。
うちとこのトウタ&ゲドは、ゲドを影ながら応援するトウタ先生の図になりそうです。

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